自分にとって印象深い小説になった西加奈子の「サラバ!」

西加奈子の「サラバ!」を読みました。昨日下巻を買って、一日でダーっと読みました。

 

サラバ! 上

サラバ! 上

 

  

サラバ! 下

サラバ! 下

 

 

上巻は正直ちょっとダレ気味に読んでいたのですが、下巻の途中から一気に面白くなりました。止まりませんでした。

以下、ネタバレ含みます。

 

主人公の歩は、要は極度に周りの視線を気にしてしまう、自意識過剰な人だということでしょうか。幸か不幸か、その過剰な自意識に耐えられるくらい上手く立ち回る能力や外観を備えていて、ずっとうまくやりすごして生きてきたけれど、ほころびが出て躓いてしまったときには、そこからの立ち直り方が分からず、苦しんでしまっているように見えました。

一方で姉は、過剰な自意識をもちながら、弟の歩のような立ち回り方や外観を備えておらず、小さいときからもがいていた。その葛藤を続けて続けて続けた末に、やっと克服する道を見つけることができたのだと思います。

姉が言う「信じるものを誰かに決めさせてはいけない」とは、つまりは周りの評価ではなく、自分の気持ちを大事にしよう、という事なのでしょうか。

自意識過剰な人間にとって、周りの評価を気にすることってもう自然に身に染みついてしまっていることなので、周りの評価をあたかも自分の気持ちのように捉えてしまうんですよね。僕もけっこう自意識過剰な方だと思うので、読んでて正直グサっときましたし、感動もしましたし、すごく考えさせられました。

僕自身の話ですが、妻との結婚を決めるとき、周りの評価、しかも特に家族の評価を気にして迷っていたところが大きかった気がします。悩みに悩みましたが、あの時、周りの声よりも「一緒にいて安らげる」という自分の正直な気持ちを尊重できて本当に良かったと、今では思います。

後半の、歩が友人2人の仲を怖そうとする場面、きつかったですね。人間の心の醜い部分が浮き彫りになった感じで、ただ歩のその醜い気持ちにはすごく共感できて。すごいです。読んでて震えました。

西加奈子が先日のあさイチで語っていたメッセージがそのまま詰まっているところもありましたね。小説の素晴らしさ、その解釈や何を信じるかは人それぞれ、読者それぞれに委ねられているということ。読む人の心境やタイミングによって、その都度響くメッセージが変わってくるという小説の魅力。

西加奈子自身の思いというものがかなり投影されている小説だと感じました。当たり前か。

この作品を読んで、小説への情熱に満ちた西加奈子という作家が好きになりました。

姉の言う「信じるもの」について正直完全に理解できていないです・・・。そういう点も含めて、後日また読み返してみたいな、と思える印象深い小説でした。

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