弱者放置リスクと多様な考え方について

少し前の放送ですが、録画していたクローズアップ現代の「“分断”の危機は避けられるか ~仏テロ 広がる波紋~」を見ました。フランスでのシャルリエブド襲撃テロ以降、フランスやドイツでイスラム教徒移民者への反発が強まっていることを伝える内容でした。


“分断”の危機は避けられるか - NHK クローズアップ現代

 

感じたことは2点です。弱者の鬱屈したエネルギーが「イスラム国」のようなテロ組織を生み出しているということと、多様な考えを受け入れることの難しさです。

 

弱者の放置はリスクの放置

イスラム教徒移民者は宗教上の文化の違いや貧困によって社会的疎外感を感じており、これとテロとの関係性が番組の中で指摘されていました。

今回のテロが移民系の人によって行われたということは、本来、政治的な問題であるテロの問題が、社会問題、貧困の問題と、あるいは移民の生活状況と社会的な存在感とが結び付いてきているということであろうかと思います。

“分断”の危機は避けられるか - NHK クローズアップ現代

同様な指摘は、歴史人口学者エマニュエル・トッド氏もしています。日経新聞の記事からの引用になります。

高い教育を受けた富裕層の若者はオーストラリアやカナダに移る。だが移民とその子孫は貧しく、十分な教育を受けられない。経済危機で職もない。いらだつ若者は発展途上国に向かう。その一部が過激派『イスラム国』を目指すのだ。

移民疎外 過激派生む 仏連続テロ1ヵ月 トッド氏に聞く 宗教と表現 解けぬ難題 :日本経済新聞

このように、弱者となったイスラム教徒移民の鬱屈したエネルギーがテロを生み出している側面があることは間違い無さそうです。弱者を放置することは倫理的に好ましくないという問題だけでなく、社会のリスクを生み出すという問題もはらんでいるのです。日本も含め、世界中で経済的な格差の拡大が指摘されていますが、これはテロの発生リスクがどんどん高くなっているとも言えます。恐ろしいことです。テロのリスクを下げるために、皆が手を取り合って助けあう仕組みが必要です。自分のために、他人を助けることが必要なのです。情けは人のためならず、ですね。

 

多様な考えを受け入れることの難しさ

クローズアップ現代の番組内で驚いた場面が、イスラム教徒移民とフランス人との会話の噛み合わなさでした。

預言者ムハンマドが裸の姿で描かれたら、それはとんでもない侮辱です。」

「でもそれを止めさせることはできない、表現の自由があるんだから。」

「そんなに過剰な“表現の自由”は必要ですか。」

イスラム教を知らないフランス人には侮辱ではないのよ。」

「侮辱は侮辱です。」

「生っ粋のフランス人にとっては違うのよ。」

イスラム教徒は傷つくんです。
いくら表現の自由があると言ったって…。」

“分断”の危機は避けられるか - NHK クローズアップ現代

僕個人としては、イスラム教徒の主張はもっともだと思います。その主張に対して、頑なに「表現の自由」で議論のカタをつけようとするフランス人はあまりにも配慮が足りないという風に感じました。

日本風の価値観で言うなら、例えば天皇が、あるいは自分の親が、裸で描かれていたら、と考えてみると、それは侮辱だと感じるでしょう。番組に出ていたフランス人はそういった考え方が出来なかったのでしょうか。

でも、ひょっとするとそういう考え方は僕やイスラム教徒独自のものなのかもしれません。フランス人には「表現の自由」が何よりも優先される、という考え方があるのかもしれません。

ドラマ「鈴木先生」では、多様な考え方を認めること、「自分とは違う考え方があることを認める」という考え方の重要性が指摘されていました。ドラマを見ていた僕はなるほど、と感動したのですが、それを実践することは本当に難しいと思います。

なぜなら、自分とは違う考え方を認めることになると、自分の考え方の支え、精神の拠り所が無くなってしまうように感じるからです。人間、何かを考えるには必ず拠り所となるものが必要です。それが無ければ、何も考えられないはずです。つまり、「自分とは違う考え方があることを認める」とは、無思考になることになってしまう事だと思うのです。

人間そんな風には生きていけませんよね?結局人間は何かを拠り所にして生きていくしかなく、その時点で違う考え方を受け入れられておらず、結果として、いつか必ず意見の対立が生じてしまうでしょう。人と人とは決して分かり合えないのです…。

屁理屈かもしれませんが、極論を言うと、「自分とは違う考え方があることを認める」という考え方を広めようとすると、それはそう思わないという考え方を排除することになってしまって、自己矛盾が生じます。

色々と書きすぎて、もう何がなんだか分からなくなりました。

要は、「自分とは違う考え方があることを認める」という考え方の実践方法が分からないのです。どなたか、分かる方教えてください。

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